病気と処置

■耳掻きによる損傷

 
耳掻きによる損傷ではどのような障害が起こりうるのでしょうか。最も多いのは耳掻きによる外耳道の傷、即ち外耳炎です。
 
軽度の発赤にとどまるものから、表皮の剥脱がおこり耳漏の分泌の見られるもの、あるいは外耳道が完全に腫れてしまって鼓膜の確認のできないものまで様々です。
 
適切な治療が行われた場合には比較的短時間で治癒することが多いのですが、耳の中を触るのがクセになってしまい、痛いにも拘わらず耳掻きを続けるような人では治癒が長引くことがあります。
 
そればかりか、外耳道は閉鎖した空間でいつまでも耳漏でべたべたしているわけですから、ここに湿疹が でき慢性の外耳道湿疹になってしまうケースもあります。
 
慢性の湿疹で分泌物が多いわけですから、そこには真菌即ちカビがついて更に分泌物を増加させます。カビがつ いた場合には厄介で非常に強い痒みを訴えますので、更に手が耳へいってしまうという悪循環を繰り返してしまうのです。

更に深刻なのは、耳掃除をしている時に誤って鼓膜を突いてしまった場合で、外傷性の鼓膜穿孔を引き起こします。
 
このような事故が起こるには様々な原因がありますが、耳掻きをしている時に子供さんがぶつかったとか、自分が歩きながら耳掻きをしていてたとかどれも少し注意をしていれば防げる場合が多いような気がします。 少なくとも近くに子供さんがいる時には耳掻きはしないほうが良いでしょう。
 
鼓膜に穿孔ができるとまずその瞬間に激痛を覚えます。そして、その直後より難聴、耳鳴り、耳閉感などの耳症状と出血や耳漏が起こります。このような症状が認め られた場合にはお近くの耳鼻科を受診してください。
 
鼓膜に穿孔ができてしまったら もう穴が塞がらないかというとそういう訳でもありません。鼓膜の内側に重要な組織が無く、しかも鼓膜の穿孔の大きさが全体の1/2から1/3程度であれば、特別な操作 をしなくても体の治癒力で自然に閉鎖してゆくことも少なくありません。ただし、創面に感染が起こらないことが絶対条件ですので、完全に治癒するまでは水などが入ら ないように注意する必要があります。穿孔が自然に閉鎖しなくても鼓膜パッチ法や鼓膜穿孔閉鎖術、鼓膜形成術などの簡単な手術で後遺症もなく閉鎖できる場合がほとんどです。
 
一方、同じ外傷性鼓膜穿孔でもその打ち所が悪い場合、即ち突いた先に耳小骨など の重要な組織が存在した場合にはかなりのダメージをこうむることとなります。
 
耳小骨はツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨という3つの小さな骨の連鎖で音を伝える役目をしており、この連鎖が離断してしまうと難聴が起こります。また、アブミ骨は内耳に溜まったリンパの液をフタするように存在していますので、アブミ骨がずれるとリンパ液が漏れてしまいます。
 
そうすると非常に強い回転性のめまいが起こり、平衡感覚も 障害されてしまいます。このような状態になると10日から2週間の絶対安静が必要になります。その後もめまいが治まらないような場合には耳小骨手術というかなり難しい手術が必要となります。