病気と処置

■滲出性中耳炎

 
耳を痛がらなければ中耳炎ではないかと言うと、そうとばかりは言えません。
中耳に急性炎症がなくても滲出液が貯留する滲出性中耳炎にもなりうるためです。初めか ら滲出性中耳炎で発症する場合もありますが、急性中耳炎に続いて発症するような場合もあります。
 
滲出性中耳炎では急性中耳炎のような耳痛や発熱などの症状は示さず、自覚症状の表現ができない乳児などでは見逃されることがありますが、中耳に滲出液が溜まり耳が塞がった感じがしたり聞こえが悪くなったりします。
 
滲出性中耳炎の原因もやはり鼻咽頭と密接な関係があり、耳管開放や逆に耳管狭窄などの耳管機能不全や、アデノイドの増殖、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎などがその 原因と考えられています。

いずれも中耳腔への換気の障害により鼓膜が内側に陥凹し、その圧負荷のために滲出液が貯留してくるものと考えられています。



治療は滲出性中耳炎でもまずその原因疾患の治療を行います。副鼻腔炎やアレル ギーに対しては内服薬の他にネブライザーによる治療を行います。耳管機能不全に対しては耳管通気法が行われます。
 
最近ではマクロライドという系統の抗生物質を少量でしかも長期に渡って服用することによって、滲出性中耳炎や副鼻腔炎がよく改善す るという報告もされています。これらの保存的な治療に対しても改善が認められないような場合には、鼓膜切開術が行われます。
 
鼓膜切開を行ってそれで改善してしまう人はよいのですが、耳管機能不全が改善されていないような人では、すぐにまた滲出液が貯留してしまうような人もいます。
 
何回も鼓膜切開を行うのは患者さん本人にとっては非常に苦痛なことですから、頻回に滲出性中耳炎を反復する人は手術の対象になります。
 
小児では耳管機能不全に対してのアデノイド切除と、中耳の換気を得るために鼓膜換気チューブ挿入術が行なわれます。耳管の通りが悪い子供の間は、 チューブを挿入することによって、持続的に換気が行なわれるため中耳にはいつも空気が通っている状態になり滲出液は溜まらなくなります。年齢的に、手術中安静にで きず泣いて動いてしまう場合や、アデノイド切除、扁桃摘出をいっしょにに行なう場合は全身麻酔が必要となります。